杉本文楽 曾根崎心中

7 プロダクションノート

2010年8月10日

イメージ映像撮影@大阪・国立文楽劇場小ホール


大阪・国立文楽劇場小ホールで、杉本博司氏によるお初のイメージ映像の撮影が行われ、またその一部がプレスに公開された。

今回撮影した映像は、杉本文楽の見所のひとつ、現行曲では割愛されている冒頭の「観音巡り」での演出に用いられる。敬虔な信仰を持つお初の、観音霊場巡礼の道のりの中に映像が挿入され、舞台上のリアルなお初と映像とが交錯するところから、物語が幕を開ける。

人形を遣うのは、桐竹勘十郎氏。杉本氏のリクエストに応えながら、お初が汗をぬぐい、息をつき、手を合わせて深く頭を垂れる所作は、演出として定型化された「振り」とは違う、役者に演技をつけるのと変わらぬ生々しささえ感じられる。

撮影後は簡単な会見が行われ、杉本、桐竹両氏から、今回の撮影についての説明があった。杉本氏曰く、ただ霊場巡礼の過程を演じても観客が飽きてしまうため、おそらく当初の「観音巡り」には、さまざまな演出が加えられていたはず。「杉本文楽」でも江戸時代にはない技術を取り入れた「魅せる」仕掛けを用意している、とのこと。

また桐竹氏は一人遣いの人形の復元に取り組んでいるが、いまある一人遣いの人形(復元)は、動きに制約が多い。しかし本来はもっと多彩な動きが可能な人形もあったのではないかと想定、これまでにない豊かな表現力を持つ一人遣いの人形の研究に余念がない。「自分でやらないと気が済まない」桐竹氏は人形の衣装も自ら針をとって縫っているが、新作するお初については、エルメスからスカーフ「グロリアの夢」(2009年春夏コレクション)の提供を受ける。これはスカーフのモチーフになったアボリジニ(オーストラリアの先住民族)の伝統文様が、あたかも人魂のようにも、着物の図柄のようにも見えるところから杉本氏が目を留め、エルメスの協力を得て実現。一人遣いだけでなく、衣装にもこれまでにない新鮮な感覚を加えた、誰も見たことのない「お初」が、来春舞台の上に登場する。


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今回撮影に用いた人形は、現行の三人遣いのもの。


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型どおりの演技ではなく、人形の動きはアドリブ中心。


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モニターを見ながら演出について検討する杉本、桐竹両氏。


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「目を閉じたまま、しばらく止まっていて下さい」。映像用の演出に桐竹氏が自在に応える。


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杉本「指の節を写したくないので、合わせた両手はやや顔から離して」


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可憐な「主演女優」を間に挟んで記念撮影。


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杉本文楽では出遣い(人形遣いが顔や身体を隠さずに遣うこと)ではなく、全段黒衣で通す。