2010年10月14日
福本潮子さん作 幔幕が登場します
福本潮子さん作幔幕 -霞たなびく-杉本博司は、これまでの文楽の舞台とは異なる象徴的な造形によって、状況や場面を示唆する舞台美術を計画している。
そのひとつがクライマックスシーン「天神森の段」に登場する藍染めの幔幕だ。染織作家・福本潮子(ふくもと・しほこ)さんによる麻地にしみ染めをほどこした『霞たなびく』は、全長13メートルにもなろうかという大作。
2002年、ベネッセアートハウス直島での「家プロジェクト」のひとつとして杉本が設計した「護王神社」竣工時の能公演でも、福本さんの手になる幔幕が用いられたことを、印象深く覚えているファンも少なくないだろう。
文様を排し、染め色の濃淡だけで表現された抽象的な空間は、悲劇へひた走る2人と観客とを、この世ならざる場所へ連れ去るに違いない。
(プロフィール)
1945年大阪市生まれ。京都市立美術大学(現:京都市立芸術大学) 西洋画科在籍中に訪れたニューギニアで民族美術の調査に関わったことから、日本文化に深く親しむようになる。特に古来から受け継がれてきた伝統技法である 染織に魅かれ、1980年代から精力的に藍染作品の制作を始め、「銀河シリーズ」で注目を集める。現在は茶道や能の世界にも活動を広げ、その独創的な作風 はヨーロッパやアメリカでも高い評価を受けている。