杉本文楽 曾根崎心中

7 プロダクションノート

2010年12月 7日

【12月5日(日)世田谷パブリックシアター】笈田ヨシ×杉本博司 公開対談報告

谷崎潤一郎の小説「春琴抄」と随筆「陰翳礼讃」をベースに、
英国人演出家サイモン・マクバーニーが演出を担当した演劇公演「春琴」。
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現在世田谷パブリックシアターで再演中のこの舞台の上演作品レクチャーとして、
出演者の笈田ヨシさん、杉本博司による公開対談が行われた。
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このレクチャーに杉本が招かれたのは、
初演以前から杉本作品に傾倒していたサイモン・マクバーニーが、
米国の小説家ジョナサン・サフラン・フォア(『エブリシング・イズ
・イルミネイテッド』で知られる)の紹介で杉本の知遇を得、
「春琴」の演出の中に、杉本による「陰翳礼讃」シリーズ
(窓を開け放った室内で和蝋燭を灯し、吹き込んだ風によって揺れる炎を
1本が燃え尽きるまで露光させる)のイメージを反映させたことが契機となった。
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一方「春琴」で晩年の佐助役、そしてまた物語の狂言回しとしての役を演じた
笈田ヨシさんは文学座、劇団四季を経て、ピーター・ブルックが設立した
国際演劇研究センター(CIRT)に参加。
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杉本同様、1970年代からパリを拠点に各国の舞台で俳優として、
また演出家として活躍している。
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そんな2人によるレクチャーは、
それぞれの活動を紹介する15分ほどの映像上映から始まり、
日本人としてのアイデンティティや仏教(特に禅宗)への「説明責任」を
要求された海外流出日本人としての経験、劇中で共に「人形」を用いる『春琴』と
『杉本文楽 曾根崎心中』との共通点や、
三島由紀夫が唱えた絶対自由としての自死について、
また世阿弥による「離見の見」の演劇/芸術論など話題は尽きることなく、
予定時間を大幅にオーバーしての対談となった。
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司会は青山ブックセンターでのトークショウと同じく、橋本麻里さんが務めた。